高級住宅地に忍び寄る「フードデザート」
東京・港区で進む個人商店の減少と高級化
日経新聞で、東京の高級住宅地における「フードデザート」が深刻化しているという記事を読みました。フードデザートとは、肉や魚、野菜といった生鮮食品の入手が困難になる状況を指すそうです。
例えば港区では、マンションなどの集合住宅が増加した影響で個人商店が姿を消し、加えて高級住宅街という土地柄もあって、スーパーの品揃えも高級志向になってきているようです。その結果、高齢者にとって「近くにあるお店が減った」「売っている商品が高い」といった理由で、生鮮食品の購入が難しくなりつつあると。
生鮮食品が「買えない」「買わない」時代へ
確かに、買い物できる場所が少ないのは高齢者にとっては大きな負担です。でも、今はネットスーパーもありますし、そうしたサービスを高齢者自身も使えるようになっていく必要があると思います。
実際、スマホを使いこなす高齢者もいれば、そうでない人もいますが、全体としてはまだ“使いこなせていない”人の方が多い印象です。競争力のない個人商店が淘汰されていくのは時代の流れとも言えます。便利なサービスが次々と登場する中で、「昔ながらの方法が通用しなくなる」ことに不満を抱くのではなく、自分自身が時代に合わせて変わっていくことが求められていると感じます。
企業と行政にできること
採算性と社会的意義のバランス
一方で、企業や行政の視点に立つとまた違った見え方になるでしょう。企業側から見れば、採算の取れないニッチな層にリーチする必要はなく、特に大手企業ほど港区のような高所得者層だけを相手にしてもビジネスが成り立ちます。
しかしその陰で、「高くて買えない」「近くに売っていない」と困っている高齢者は確実に存在します。市場規模は小さいかもしれませんが、だからこそベンチャーや中小企業にとっては参入価値のある“ブルーオーシャン”かもしれません。生産者と直結した宅配サービスや、病院と連携した直売所の設置など、アイデア次第で他地域にも横展開できる可能性を秘めています。
ベンチャーと官民連携の可能性
では行政はどうでしょうか?この問題を“個人の課題”とするか“社会の課題”とするかは、困っている人の数によると思います。もしある程度の人数が同じように困っているなら、行政としても動くべきでしょう。
例えば、農協と連携して公共施設内に臨時販売所を設けたり、大企業と組んで移動販売サービスを展開したりといった対応が考えられます。企業にとっても、行政との協業による社会貢献という側面からイメージアップが図れ、Win-Winの関係になる可能性もあります。
フードデザートは序章にすぎない
高齢化社会が抱える“個人では解決できない”課題
こういった問題は今後、日本全国で顕在化してくるでしょう。高齢者ばかりの地域が増え、単身高齢者も増加傾向にあります。年金が減り続ける中、自力で生活を維持できる高齢者は減っていきます。病院に行きたくてもお金がない。そんな現実も、遠くない未来にやってくるかもしれません。
今でも「孤独死」という言葉が出てきているように、すでにその兆しはあります。個人でどうにかできる問題もあれば、そうでない問題もあります。政府にはそのあたりの“線引き”と、“対応力”が求められます。
それでも、時代に取り残されないために
正直、今の日本政府では対応しきれないかもしれないという不安もあります。人口ピラミッドを見ると不安になる要素ばかりですが、それでもポジティブな側面もきっとあるはずです。高給取りの“窓際族”が退職すれば、若者の給料が上がるかもしれませんし、企業もより生産性を重視するようになるでしょう。
どんな未来が来ようとも、自分自身は時代に食らいついて、取り残されないように生きていきたいと思います。
2023/12/10